老化を防ぐ

先日、葛粉の老化についての検証を行いました。

加熱により透明になり、冷却によって白くなるという感じの検証でした。

 

今回はその検証をもとに、老化を抑える実験をしてみました。

一言に老化を抑えるといっても、色々な方法があります。

例えば・・・

違う種類の澱粉を混ぜて使う。

老化を妨げる添加物を使う。

糖分を添加する。

などなどです。

 

この中から、今回は「糖分を添加する」で実験します。

まず2種類の葛餅をつくります。

1つは水と葛粉だけで。

もうひとつは水と葛粉、そして葛粉の2倍量の上白糖です。

この2つをほぼ同時に煉りあげます。

前回と同様に、冷やすため冷水に浸した瞬間を開始0分とし

変化の度合いを5分ずつ撮影しました。

 

5分後 この時点でかなり差がでています。

右が砂糖入りですが、煉りあげた時の透明感はすごいです。

2-1

10分後 ↓

2-2

15分後 ↓

2-3

20分後 ↓

2-4

25分後 ↓

2-5

30分後 ↓

2-6

35分後 ↓

2-7

40分後 ↓

2-8

45分後 ↓

2-9

50分後 ↓

2-10

55分後 ↓

2-11

1時間後 ↓

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ここで前回同様、冷蔵庫で冷やす実験もしました。

前回は30分間、冷蔵庫で冷やすと

下画像の右のようになりました。 ↓

2-12-1

今回は1時間冷蔵庫で冷やしました。

こんな感じです。 ↓

2-12-2

完全に冷たくなっていますが、前回のように真っ白にはなりません。

続きをどうぞ。

1時間30分後 ↓

2-13

2時間後 ↓

2-14

 

2-15

いかがでしょうか。

ちょっと写真では分かりにくい部分もありますが

老化速度に違いがあることはわかっていただけると思います。

 

なぜ砂糖で老化が抑えられるのでしょうか?

 

砂糖が澱粉と混ざり合うことによって、老化の際に起こる澱粉の再結晶化が妨げられます。

そして、砂糖特有の保水作用によって澱粉からの離水を防ぎます。

このような砂糖の効果から、通常より遅い速度で老化するのです。

 

さらに、砂糖には防腐効果もありますので、日持ちを長くすることもできるのです。

砂糖の添加は良いことばかりに思えるようですが、そうでもないです。

葛本来の食感・弾力、そして風味も砂糖によって変化しています。

自分で葛餅を作る時は、「純粋な葛餅が食べたいのか」それとも

「なるべく日持ちのする葛餅が食べたいのか」 など目的に合った

砂糖の使い方をしてください。

ちなみに今回の配合は大きな違いが欲しかったので、砂糖はかなり多いです。

食べたら まず一言 ・・・・・甘い。

葛粉の糊化・老化

葛粉は水と混ぜ、加熱することによって透明になります。

しかし、冷却とともに白濁としてきます。

これは、何度か説明したとおり葛粉の特徴の一つです。

 

では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか?

ある程度簡単に説明します。

まず葛粉は「澱粉」であるということ。

澱粉は水には溶けません。

一見溶けたように見えますが、混ざっているだけなので

時間の経過とともに底に沈殿します。これが澱粉の特徴です。

 

水と混ぜた澱粉を加熱すると透明になってきます。

これは加熱により、澱粉の構成が崩れ、結晶性・複屈折性を失います。

それに伴い、透明になり急速に粘りがでてきます。

これを澱粉の糊化(こか)といいます。

温度ではだいたい55℃で糊化が起こり始めます。

糊化が起こっている時、澱粉は水分を吸収していきます。

吸収できる水分には限界があります。その限界が粘りの一番強い時です。

これを超えると澱粉の粒子がどんどん崩れ、粘りが低下してきます。

このことから、葛餅などを煉るときは長時間煉ると粘りがぬけて

コシの無い葛餅になってしまします。

美味しい葛餅をつくるためには、「短時間で手早く」が大切です。

全体が透明になればOKということです。

 

次は糊化と逆の変化についてです。

加熱によって透明になった澱粉は冷却によって白くなります。

これは、温度の低下により崩れていた澱粉の構成が復元されていき

再結晶化していくためです。このため、透明感と粘りは失われていきます。

これを澱粉の老化(ろうか)といいます。

 

糊化と老化は葛粉に限らず、すべての澱粉で起こります。

ただ、澱粉の種類のよって変化の速度は違いますが。

 

上記の特徴を踏まえたうえで、本日 葛粉の老化の速度を検証しました。

吉野本葛と水だけを使用した葛餅を作り、その変化を調べました。

まず煉りあげた時点が一番透明で弾力があるので、冷ますために冷水に

入れた瞬間を開始0分とします。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

熱を取るため約3分間、水の中で冷やしカットしました。

5分おきに撮影してますので変化をみてください。

 

大事な注意点ですが、今日は暑くて室温がだいたい30℃でした。

5分後

1-1

10分後

1-2

15分後

1-3

20分後

1-4

25分後

1-5

30分後

1-6

ここでもう一つ検証。

カットしたものを冷蔵庫(庫内温度5℃)で冷却しました。

同じ30分間ですが温度によってこんなに違うんです。

2-12-1

右が冷蔵庫で冷やしたものです。たった30分でほとんど真っ白です。

続いて35分後

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40分後

1-8

45分後

1-9

50分後

1-10

55分後

1-11

1時間後

1-12

1時間30分後

1-13

2時間後

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これが葛粉の老化の速度の検証結果です。

 

冷蔵庫の検証からも解るように、温度によって老化の速度は大きく異なります。

今回は室温30℃での検証で、この速さです。

ある程度透明で弾力の良い状態は、今回の場合20分くらいでした。

なのでこの葛餅を美味しく食べられる賞味期限は20分ということです。

これは冬場だと気温が低いので、もっと短いでしょう。

美味しい葛餅や葛きりを食べるには、やはり「出来立て」ですね。

 

検証続編 老化を防ぐ

葛粉の使い分け

「吉野本葛」と「吉野葛」は材料の違いと説明しました。

では、どのように使い分ければいいのでしょうか?

下記は私の経験から判断した解釈です。

葛粉を選ぶ際の参考にしていただければ嬉しいですね。

ポイントは二つです。

一つ目は葛粉が他の澱粉よりもはるかに優れているもの。

葛粉の持つ「薬効成分」 と 「澱粉粒子の細かさ」 です。

葛の製造工程では寒水で何度も何度も晒し(さらし)続ける為

澱粉の粒子が非常に細かく、世界一上質と言われています。

その為、消化吸収に優れ体調不良時の栄養補給に昔から用いられています。

また、独特の薬効成分を持っています。

解熱発汗作用や鎮痙作用など、たくさんの効果があります。

上記のような効果をお求めの場合は、「吉野本葛」をおすすめします。

「吉野葛」も薬効を摂取できますが、他の澱粉(さつまいも)が

混ざっている分、効果は薄くなります。

二つ目は弾力 と滑らかさです。

葛餅や胡麻豆腐などの練り物を作る場合、コシの強さに違いがあります。

葛粉は他の澱粉と比べて、弾力が強いわけではありません。

コシの強さだけで判断すると、さつまいも や じゃがいもなどの「芋系」の澱粉のほうが

強い粘りとコシの強さを感じます。

葛粉が優れているのは、他を圧倒する滑らかさです。

練り物や汁物のとろみ付けなど、口当たり良く上質な仕上がりになります。

なので、しっかりした弾力・コシが欲しい方は「吉野葛」

とにかく上品に・滑らかに仕上げたい方は「吉野本葛」ですね。

これ以外にも価格もかなり違ってきますので、自分の求めている物は

何なのか?見極めたうえで判断してください。

吉野葛と吉野本葛

お客様が葛粉をお買い求めいただく上で

必ず知っておいて頂きたいもの。

「吉野葛」 と 「吉野本葛」

葛粉にはこの2種類の表記があります。

どのように違うかと言いますと

先のブログで記載したように葛粉とは

葛という植物の根から取った澱粉です。

この葛根の澱粉100%の物を「吉野本葛」といいます。

では「吉野葛」とは?

葛根の澱粉に甘藷澱粉(さつまいも)を混ぜた物です。

割合としては、全体量の50%以上が葛根の澱粉となっています。

この割合、そして「吉野葛」  「吉野本葛」 という表記名は

公正取引委員会での取り決めによるものですので

すべての店で共通なのです。

このことは葛粉を選ぶ際、非常に重要なので

覚えておいてくださいね。

葛の澱粉

まずは葛に関する知識の基本「葛粉」についてです。

葛粉とは?

ざっくり簡単に説明すると

葛という植物の根に含まれる良質の澱粉です。

葛の根は非常に大きく太い物です。

その中にたくさんの澱粉を溜め込んでいます。

その澱粉を取り出し、乾燥させたものが「葛粉」です。

お料理やお菓子作りに良く用いられます。