葛粉は水と混ぜ、加熱することによって透明になります。
しかし、冷却とともに白濁としてきます。
これは、何度か説明したとおり葛粉の特徴の一つです。
では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか?
ある程度簡単に説明します。
まず葛粉は「澱粉」であるということ。
澱粉は水には溶けません。
一見溶けたように見えますが、混ざっているだけなので
時間の経過とともに底に沈殿します。これが澱粉の特徴です。
水と混ぜた澱粉を加熱すると透明になってきます。
これは加熱により、澱粉の構成が崩れ、結晶性・複屈折性を失います。
それに伴い、透明になり急速に粘りがでてきます。
これを澱粉の糊化(こか)といいます。
温度ではだいたい55℃で糊化が起こり始めます。
糊化が起こっている時、澱粉は水分を吸収していきます。
吸収できる水分には限界があります。その限界が粘りの一番強い時です。
これを超えると澱粉の粒子がどんどん崩れ、粘りが低下してきます。
このことから、葛餅などを煉るときは長時間煉ると粘りがぬけて
コシの無い葛餅になってしまします。
美味しい葛餅をつくるためには、「短時間で手早く」が大切です。
全体が透明になればOKということです。
次は糊化と逆の変化についてです。
加熱によって透明になった澱粉は冷却によって白くなります。
これは、温度の低下により崩れていた澱粉の構成が復元されていき
再結晶化していくためです。このため、透明感と粘りは失われていきます。
これを澱粉の老化(ろうか)といいます。
糊化と老化は葛粉に限らず、すべての澱粉で起こります。
ただ、澱粉の種類のよって変化の速度は違いますが。
上記の特徴を踏まえたうえで、本日 葛粉の老化の速度を検証しました。
吉野本葛と水だけを使用した葛餅を作り、その変化を調べました。
まず煉りあげた時点が一番透明で弾力があるので、冷ますために冷水に
入れた瞬間を開始0分とします。
熱を取るため約3分間、水の中で冷やしカットしました。
5分おきに撮影してますので変化をみてください。
大事な注意点ですが、今日は暑くて室温がだいたい30℃でした。
5分後
10分後
15分後
20分後
25分後
30分後
ここでもう一つ検証。
カットしたものを冷蔵庫(庫内温度5℃)で冷却しました。
同じ30分間ですが温度によってこんなに違うんです。
右が冷蔵庫で冷やしたものです。たった30分でほとんど真っ白です。
続いて35分後
40分後
45分後
50分後
55分後
1時間後
1時間30分後
2時間後
これが葛粉の老化の速度の検証結果です。
冷蔵庫の検証からも解るように、温度によって老化の速度は大きく異なります。
今回は室温30℃での検証で、この速さです。
ある程度透明で弾力の良い状態は、今回の場合20分くらいでした。
なのでこの葛餅を美味しく食べられる賞味期限は20分ということです。
これは冬場だと気温が低いので、もっと短いでしょう。
美味しい葛餅や葛きりを食べるには、やはり「出来立て」ですね。