■ 極み・その三 「型打ち〜乾燥」 ■

中井春風堂の葛菓子職人 中井孝嘉が贈る 本葛菓子の新ブランド 「葛遊」

中井春風堂の葛菓子職人 中井孝嘉が贈る 本葛菓子の新ブランド 「葛遊」

口どけの良し悪しを決めるのは、この杵つきです。混ぜるだけでは水分を吸収した砂糖に本葛粉を結び付けることはできませんが、臼に生地を入れて杵で強く搗くことで、結び付けることができます。強力な圧力を加えることによって、「混ぜる」では得られない結び付けができます。生地が一つになっていくと、粘りが発生してきます。この粘りの具合を見ながら搗き時間を調整します。納得できる粘りを出すためには、少なくとも一時間以上は必要です。ここで妥協すると結晶化の粒が残ってしまい、口どけを悪くします。腕力と持久力の勝負です。

生地合わせで一番重要なポイントは本葛・和三盆糖・水の三つの材料をどれだけ細かいレベルまで一つに混ぜ合わせることができるか、ということです。水分を吸収した砂糖は、乾燥すると結晶化の粒となり、口の中でジャリジャリとした食感になります。それを防ぎ、口どけを良くするためには、砂糖と本葛粉を完全に一つに結び付けなければいけません。本葛粉が完全に混ざった砂糖は結晶化の粒を作ることができないので、口どけの良い干菓子ができるのです。まず、本葛と和三盆糖をそれぞれを細かいフルイにかけます。ミキサーを使い、しっかり混ぜ合わせます。そして再度フルイにかけます。この時点では生地は完全に一つにはなっていません。「混ぜる」では砂糖と本葛粉を一つにすることはできません。

搗き上げた生地をフルイにかけます。粘りの出た生地は簡単にはフルイを通りません。しっかり擦り付けるように通していきます。こまめにフルイにかけるのも滑らかに仕上げるためには重要なのです。このまま一晩ねかせます。そうすることでより一層、生地全体がしっとり馴染みます。これを次の日の朝、再度フルイにかけて生地が完成します。